秘密基地が実践する交流を核としたまちづくりの事例
コワーキングスペースは新しい時代の象徴である
「コワーキングスペース秘密基地」は、新しい生き方を実践する人々を勇気づける場である。ビジネス支援もさることながら、地域の交流の場であり、そこで出会った人々をつなぎ、知見と体験を組み合わせ、新しい方法で都市に新しいインパクトを生み出してきた。秘密基地は「集めて、混ぜて、つなげて、尖らせる」をモットーに、2019 年で6年目を迎えた。2016 年、石井国土交通大臣が秘密基地に視察に訪れたこともある。ここに秘密基地の設立背景から、実践している哲学や手法について、サマリーとしてまとめたい。ぜひ他の地域でも役立てていただければと思う。
コワーキングスペースが新しい時代の象徴だと言える理由がある。それは人と人、個と個の「間」に新しい価値を見出し、それを高めていく役割を担っていること。そして、この「つなぎ目」における知見や哲学、そして方法論を集積していること。これらは近代から長らく続いている古い枠組みに囚われた日本人を解放させる力を持っている。多様な社会を成立させるヒントは、この「間」にある。「人と人」、「人と社会」を新しい関係で結ぶことを可能にするコワーキングスペースは、新しい日本をアップデートする鍵だ
終わらない近代を終わりに導く
北九州は、1901 年、官営八幡製鉄所が中心的な役割を担い成立した「国家プロジェクトシティ」である。1901年の前年といえば19 世紀であることを考えると、北九州は20 世紀と共に生まれ育った、いわば20 世紀的な近代都市と言える。重厚長大産業で華々しい成功体験のある都市であるがゆえに、人々の頭からは当時の成功のイメージが離れず、都市と言えば、産業都市であり、それ以外の都市像をイメージできないという人々も少なくない。新しい都市へ変わろうにも、産業構造と同様、大きくて重たいものが人の心にも居座っており簡単には変えられない。産業よりも、むしろ人の心の方が成長のリミッターとなっているようにも思える。今や北九州の人口は減少し20 世紀的近代都市は背水の陣となりつつある。
ただ、ビジネス的に言えば、ピンチは常にチャンスとも成り得る。例えば、地方都市の場合、地域の住人たちは同じ課題を抱えているケースが多い。同じ背景に、同じコンテクスト、同じ課題、言ってみれば運命共同体とも言えるような状況にある人々が必ず一定数いるのだ。私たちは、この方向性を同じくする人々を潜在的コミュニティと呼んでいるが、地方都市の住民は常にこのような状況にある。使える状況は全て使うポジティブな発想を持てば、「排水の陣」は覚悟の材料へと変わることもある。状況が悪くとも、それが直接的に未来を指し示すわけではなく、未来を決めるのは、いつだって人の心である。
地域にどんな人がいるのか?
まちづくりに何度もトライした結果、絶望に追いやられた人々もいる。その場合はカウンセリング行う必要がある。秘密基地の場合は、まちづくりの会議に、心理カウンセラーを派遣することもある。また、まちづくりには、都市の背景を読み解いたり、ストーリーを見出すストーリーテラーやコンテクストメーカーたちも必要だろう。チームが一丸となるべく関係性を構築するためのファシリテーターやカウンセラーも重要な役割がある。秘密基地にはこれらの人材がいる。どうやって秘密基地が彼らを集めたのかと言えば、それはシンプルに、理念を共有し、心血を注いだ努力(時に飲みにケーション)を重ねた結果であると答えるしかない。視察に来られる方の中には、うちにはそういった人材がいないと言われるケースもあるが、そういうセクションでもなく、本気で探しているわけでもなかったりするので困惑することがある。人集めは、専門部署を作ってやるくらいの仕事がある。まずは本気でやらねばならない。それでも本当にいなければ、まずは外注し、その次に内在化を目指せば良い。秘密基地は、今もこれまでも、ずっと人探しを行っている。
地域人材のリソース化
上記の人集めから始まり、結果、秘密基地に集まる人々で「一般社団法人まちはチームだ」を設立した。これは外部に向けてコンサルタントを行う組織だ。ここに集まる多様な人々が素晴らしい価値を生みだしている。細かい部分は後半に紹介するとして、この社団法人は、ほとんどが地域の人々である。今やまちのコンサルタントとして全員が活躍し大忙しである。地域には、実は社会貢献をしたい人々が沢山いるのだが、大半は隠れていて見えていないと思って間違いない。まずコワーキングスペースのような実態のある場所が必要である。社会貢献に意志のある人々が集まれる場が必要だ。もはや、これまで
あった商店街や商工会だけが、まちづくりの主体ではない。今やフリーランスの人口は全体の17%(2018 年)で年間50 万人ずつ増えている。また働いてはいないが主婦にも街に貢献したい人々は多い。ただ、その意思を受け止めたり、集約する窓口や場がない。パブリックに目覚めたコワーキングスペースはその役割を負うことができる。コワーキングスペースは、人材バンク的であり、コミュニティバンク的な役割を果たせる。地域にそのような機関がないのなら、まずはここから始めるべきだ。
コワーキングスペースとは何か?
コワーキングに関する具体的な話を始める前に、まずは正しいコワーキングスペースについての理解を深めていただきたい。そのために、私の原体験について、先にお伝えさせていただきたいと考えている。その上で実践的な部分をまとめたいと考えている。コワーキング(COWORKING)とは、「CO(協)」+「WORKING(働く)」という造語である。日本語で協働と表記する場合もある。コワーキングスペースを理解するためには「シェアオフィス」と比較すると分かりやすい。一般に「シェアオフィス」は、場所貸しのみを行う。それに対し、「コワーキングスペース」は、場所貸しに加え、コミュニティ形成支援、協業支援、ビジネスの成長支援といった付帯的なサービスを行っている。「インキュベーション施設」に似ている面もあるが、中心的な業務が異なっている。「インキュベーション施設」とは、企業を成長させるための施設で、大きな企業や行政が主導的に関わり、資金調達や受注先の紹介などを行う。これは、上が下を引き上げるようなイメージであり、いわば縦の構造モデルで説明することができる。このようなことから、インキュベーション施設に入居している企業は、引き上げてくれる企業や行政との関係こそ深くなるものの、必ずしも入居企業間のつながりや連携があるわけではなく、施設はシェアオフィスのような形態であることが多い。一方、コワーキングスペースは、利用者である個人事業主や企業どうしのつながりを積極的に生み出すことを念頭においており、いわば横の関係を重要視している。運営側は、施設に集う利用者間の接点を常に考え、様々な仕掛けを行っている。また外部企業を巻き込み、インパクトを生み出すことにも価値を見出す。具体的に行われている事といえば、協業のためのビジネスマッチングのイベントや、ナレッジシェアを目指したコミュニティ形成、または単に接点を創出するための飲み会や交流会まで、とにかく、つながりを作るための機会を作っている。そのため施設には、キッチンや交流の場など、一見オフィスとは異なる機能もある。また、掲示板やコミュニティボードが設置してあり、これもつながりの機会創出のひとつとなっている。コワーキングスペースとは、すなわち、人のつながりを積極的に推進する機能を持ったビジネス関連施設だとご理解いただければと思う。現在では、多くの利用者がこの価値を感じて、コワーキングスペースを利用している。また、このコワーキングスペースには、ほとんどと言って良いほどコワーキングコーディネーター(別称:コミュニケーター)と呼ばれる専門的な人材がいる。受付事務と兼務することもあるが、彼らは職員として、コワーキングスペースから報酬(賃金)が支払われており、業務として、多様な利用者のニーズやスキルを把握し、次にコミュニティ形成を行い、協業等に関するマッチングやイベント企画等を行う仕事を担っている。しかし近年は、日本においてコワーキングスペースが広まる中、不動産会社の新しいビジネスソリューションとして、実際には「シェアオフィス」にもかかわらず、コワーキングと謳っているケースも多くある。コワーキングスペースという言葉が、流行り言葉として利用されているため、これらについては、くれぐれもご注意いただきたい。
日本のシェアリングエコノミーの起源
日本におけるシェアリングエコノミー関連のビジネスは、東日本大震災の3.11 を起点に大きく広がりを見せたと言って良いだろう。実際にインターネット上の「コワーキング」という言葉の検索も2011 年から広がりを見せている。日本が震災の後、復興の道を模索していた頃、あるロンドンの友人から一通のメールが届いた。「なぜ日本では、あんなに大きな地震災害が起きたにもかかわらず、暴動が起きないのか?」。とっさに思いついたのは、当時メディアで良く流されていた言葉「絆」であった。当時は、おそらくソーシャル・リレーションと英訳したと思うが、今となっては、ソーシャル・キャピタルと言うようにしている。暴動が起きない理由として「リレーション(関係性)」だけでは説明しきれないからだ。長い歴史の中で、日本人の人間関係に対する感性、または長期の人間関係をベースに構築された知見である。このように人間関係にも積み上げられた価値=キャピタル(資本・資産)と呼べるものがあり、暴動を起こせばその資産を取り崩すことになる。再会するかもしれない関係がある場合、暴動は割に合わないのだ。そしてもう一つ、ここにある重要な直感は、このソーシャル・キャピタルというものは、災害時のみに活きるだけのものではないだろうということだ。反転させることで、まちづくりやビジネスに関しても、その力を発揮する可能性は十分にある。
日本人の強み:ソーシャル・キャピタルを活かせ
2008 年、ロンドンから帰った私は、シェアリングエコノミーは、日本にはなじまないと思っていた。しかし、3.11 で状況が変わった。あの時、共同生活や人々の助け合いの中に、大事な何かを見出した者たちがいたのだ。私もその一人であった。「絆」の存在が明らかになり、力強いソーシャル・キャピタルの存在に気づかされたのだ。日本人の考える人間関係には特別な何かがある。実は、私にはその直感を裏付けるだけの経験があった。以前、私がロンドンに住んでいた頃に体験したのだが、日本人だけで住んでいた頃のシェアハウスには、問題一切が起きなかったことを思い出したのだ。2001 年~ 2005 年まで、イーストロンドンはハックニーという地域に住んでいた。今となっては、オシャレなストリートと言われることが多いが、私が住んでいた頃は、多くの外国人が暮らす、いわゆる雑多な移民地域であった。EU に加入するヨーロッパ諸国も多くなり、EU内での労働ビザの取得が簡単になったことで、外国人たちであふれていた。まさに人種のるつぼであった。この頃、2012 年のロンドンオリンピック誘致に向けた積極的な投資が始まった時期であり、2020 に向かって準備を進める東京のような雰囲気があった。オリンピックに向けた開発が始まるに従い、建築業界は人手不足となった。当時AA スクールという建築の学校に通っていた私にも仕事の依頼があった。その頃、ひょんなきっかけから、アイルランド人の大工たちと工務店を始めることとなった私は、学校をやめ、工務店での設計業務と、シェアハウス等のストック型のビジネスを始めることになった。AA スクール時代、お金のなかった私は、学生目線でロンドンの安い住宅事情に精通していた。そのため、私が中心となり、シェアハウス事業を始めることとなったのだ。工務店として設計をする傍ら、シェアハウスを4件、シェアオフィスを2件運営していた。当時はコワーキングスペースという言葉はなく、私たちはフラットシェアリングと呼んでいた。そんな中、私たちが経営していたシェアハウスのうち、なぜか日本人だけで集まっているシェアハウスだけは、不思議なことに全く問題が起きなかった。多民族でシェアしているシェアハウスでは、結構な頻度でゴミ出しが行われていないとか、共用スペースが散らかっている問題等々。問題は些細であるが、これが毎日のことだとお互いに大変である。このような問題でさえ、日本人だけで集まっているシェアハウスではあまり聞いたことがなかった。この時はこの意味について気づかなかったのだが、3.11 が起きたとき、この全てに説明がついた。私は雷に打たれたように日本人のソーシャル・キャピタルの凄さと可能性に気づいたのだ。
コワーキングの本質をつかむこととなった出来事
ロンドン時代、私自身も住居をシェアして住んでいた。ロンドンの一般の住宅は、その多くがテラスハウスと呼ばれるもので、横には同じレンガ造りの景観が続くと共に、一軒一軒は奥が長く、ウナギの寝床のようになっている。一番奥には裏庭があり、ここに面したキッチンに住人たちはよく集まる。どのテラスハウスもよくキッチンがたまり場となっていた。住人たちは様々な国の出身者であり、異業種だ。グラフィックデザイナー、哲学者、マーケッター、建築家など、それぞれのタマゴの若手が集まっており、得意分野や関心事項がそれぞれ異なる人々が集まっている。夜になると、住人たちがキッチン集まり始める、ワインをあけ、チーズをのせたパンを食べはじめる。夜はいつもそのような感じだったが、そのうち面白い時間がやってくる。ある学生がこういう話を始めた時だ。「学校の課題でこういうのがあるのだが、君はどう思う?」そう言われた住人たちは、まさに自分たちの持つ知見と専門性から回答する。これぞクリエイティブな時間の始まりである。質問した学生は、全く異なる分野の人々からコメントをもらい、指摘を受けることによって、たくさんの視点をもらうことができる。その結果作品が大きく進化することもあった。特に提案型の課題の場合は顕著に良い結果を生まれる。実はこれこそ、コワーキングの本質である。コワーキングスペースの最も重要な機能、それは異業種間と多様性から生まれるイノベーションである。良きコワーキングスペースで体感できるのは、まさにこれだ。コワーキングスペースとはその機能を持った場所であり、その象徴でもある。私の原体験は2004 年ロンドンのテラスハウスであった。
成功するコワーキングスペース設計のポイント
コワーキングのイノベーションが生まれる瞬間に立ち会ったことのない人々がコワーキングスペースを設計することはおそらく不可能であろう。インダストリアル系のかっこ良いスペースを作ったからと言って、コワーキングスペースができるわけではない。上記の体験をベースに何を用意しなければならないか、想像してみることをお勧めする。また、人々の交流を通したインパクトを設計したいなら、以下の点は、必ず実現したいところである。
・異業種の人材が多い→多くの知見が得られる
・くつろげる環境→クリエイティブな感性を刺激
・飲食できるスペース→人間関係を良好にする
どのようにコミュニティ構築するか?
秘密基地には例えば下記のイベントがある
「秘密基地ランチ」「スナック秘密基地」「酒の会」「あなたの戦略会議」「ネットTV 番組」「本を読む会」「交流パーティー」等、1週間でこれくらいのイベントがあり、時期によってはさらに増える。また年に3回「創生塾」というセミナー講義が20 講座ほどあり、まちづくりイベントは年間5回程度ある。どの入口から入っても良いようにしており、別のイベントを紹介するようになっている。
現代社会のOS またはリベラルアーツ「創生塾」
イノベーションや協業は突然起こらない。人々を巻き込むのであれば、入念な準備と設計が重要である。何よりも動機を高めることが必要である。そこで、まずOSのようなものをインストールする機会が必要であると考えている。「創生塾」は、まさにOS である。知見と体験のシェアリングを掲げた新しい「生き方を創る」ための塾であるが、さながら現代版リベラルアーツであると自負している。これまで延べ12,500 名の受講者がおり、創業者数は45 名。創生塾は、文字通り、「生き方を創る」塾として、現代社会の理解を深め、時代を生き抜くための啓蒙活動を行っている。SNS などの現代的なツールや、実践的なWEB マーケティングの知識なども学習することができる。これらを通じてフリーランス/フリーエージェントとして、社会で生きる最低限の力を養う。また、ひとりで戦うのではなく、チームとして仕事をするための基礎的なスキルを学ぶ。例えば、コンサルティング業を行うために必要なヒアリング能力やファシリテーションなどを学ぶ講座などもある。「創生塾」は他の創業スクールと異なり、「やり方(方法論的)」ではなく「あり方(人格主義的)」に焦点を当てている。これはFacebook やInstagram などのSNS 講座においても、同様の観点から語られている。例えば、SNS において、どのような投稿が「いいね!率」が高いかを研究すれば、自ずと相手目線の投稿こそ、最も効果が高いことが分かるのだが、ビジネスとはすなわちこのような人間関係の延長線上にあると教えている。SNS を行う意味とは信頼の構築に他ならない。SNS やWEB は、「weak tie」でドライな関係を構築しているように見えて、実は信頼性をいかに創り出すかが重要である。「創生塾」は、このような方針から周辺との間に自身のソーシャル・キャピタルを高め、社会に貢献できる人材を育成している。
さらにCSV(共同価値創造)に関する講座があり、ここでは自他のWIN-WIN から、私と社会のWIN-WINに及ぶまでをビジネスとして学ぶ。その結果、まちづくりへ参加する意識も高まる。社会への貢献こそ、自身のビジネスにも活きるという事を明確に伝えている。公務員もこれまで多数参加しており、共感をもった行政マンたちと多くの官民連携組織がうまれ、プロジェクトを行い、年間約10 億円程度の社会的なインパクトを創出してきた。「創生塾」は2019 年2月、経産省より特定創業支援事業者として「創業機運醸成賞」を受けることになった。
日本人は社会とは何かを学んでいない
公務員に勤めた方々はもしかしたら学ぶ機会があるかもしれないが、民間に勤めた場合、社会とは何かを教えてくれる人はそうそういない。1970 年代以降の教育改革が行われたヨーロッパやアメリカであれば、個を中心に学び、それ次に社会を学ぶケースが多い。だが、日本はいまだに近代産業的な教育のままであり、主体性に価値を見出さない教育のあり方である。主体性とはすなわち、自ら考え、自ら行動するということである。いずれにせよ、個という起点が定まらなければ、社会との関りを明確に捉えにくい。日本には、個とは何か?社会とは何か?を教えてくれるセクションがないため、まちづくりや社会参画への足並みが弱い。そのため、しっかりと社会を学ぶセクションが必要だ。「間」に価値を見出すコワーキングスペースは、これを歴史的に手垢のついてない所から語ることができる。そのため、役割として最適であると考えている。
地域に寄与する創業のあり方が正しい
創業は一人でするものではない。秘密基地ではそのように伝えている。秘密基地では仲間との間で、創業するというスタイルを推奨している。創業しても廃業するケースも多いと言われているが、秘密基地で創業した者は、誰一人として廃業していない。一か八か上昇を目指したスタートアップ方式とは異なり、堅実なコミュニティの中における最適型の経営方法を取ることを推奨しており、それは決してスタートアップに対し見劣りするものではない。むしろ、成長するチャンスに到達するまでの十分な経験を積める点では有利であるとともに、地域の産業を担うものとして社会貢献の旗を掲げ、地域に応援されるべきポジションを望んで取りに行く姿は、むしろ強かな戦略であると考えている。
今後の市場の拡大
フリーランスは年間50 万人増働き方改革や副業兼業可能な社会の中で、今フリーランスの数が増加し続けている。日本では、フリーランスの人口が1年間で約50 万人増と増加傾向にある。フリーランス先進国であるアメリカでは、現在全体の35%がフリーランス(日本は2018 年時点で17%)。日本は少なくとも、アメリカの水準まで市場が伸びると予想される成長市場である。コワーキングスペース事業は、日本においても、今後伸長が予想される、成長産業である。世界におけるコワーキングスペースの数は世界で30,000 ヵ所を超えると予想される中、日本国内においては、2016 年時で約400 ヶ所あり、現在も増加中である。
フリーランス・ノマドワーカーになる理由
フリーランスの中で、固定的なオフィスを持たない者をノマドワーカーと呼ぶ。このノマドワーカーの働き方実態調査によれば、ノマドワーカーになる理由として「自分らしく働くこと」(70.3%)「専門能力・専門性を発揮して働くこと」(63.1%)の2つが半数を超える回答した。一方、ノマドワーカーの主な不安は「収入が少ないとき・収入見通しが立たず先細りが懸念されるとき」(71.6%)、「継続的な顧客がいないとき・顧客が減り続けるとき」(44.9%)、「ひとりで仕事するため仕事や顧客が広がらないとき」(35.6%)であった。ここにはノマドワーカーの不安要因として「顧客の獲得、販路拡大、協業」の機会が挙げられている(2014 年日本経営協会)。コワーキングスペースは、このニーズと不安に対し、ソリューションを提供する役割を担っている。また、ノマドワーカーやフリーランスとまちづくりは、相性が良い。なぜなら、自ら時間を選択することができるからだ。そのため、ぜひ力に加えていただきたいと思う。ノマドワーカーやフリーランスとまちづくりは、相性が良い。なぜなら、自ら時間を選択することができるからだ。ぜひ力に加えていただきたいと思う。
今後のコワーキングスペースの動向
コワーキングスペースの歴史は、まだまだ始まったばかりである。バリ島のコワーキングスペースDojoBali には、毎日70 名程度のヨーロピアンが仕事と休暇を兼ね合わせて滞在をしている。いわゆるCOWORKATION(COWORKING + VACATION)であるが、2か月程度の滞在期間中、そこで生活する彼らのお金は地域に落ちる。彼らはもちろんバカンス目的もあるが、何より長めの滞在のポイントは、仕事ができる環境である。コワーキングスペースは中期滞在を可能にする。日本では現在インバウンド客は増加傾向にあるが、短期ステイか長期ステイしか選択肢なく、地域に中期滞在させるだけの準備がなされていない。これからは地域の観光リソースをつなぎ合わせ、中期滞在のためのインフラ整備を整える必要がある。地域のコンシェルジュ機能を持ったゲストハウスやコワーキングスペースを核に、中期滞在に対応できる魅力ある地域をデザインするのも面白いと考えている。