デジタルマーケティングのアプローチ
前回は、SNSは交流ツールであり、情報はギフトであるべきだというお話をさせていただきました。このように、デジタルマーケティングに不可欠なのは、自己主張的な目線ではなく、「顧客のため」を考えることです。そして、この接点構築からより良い関係性へと、醸成させることに他なりません。顧客の欲しい情報を用意し、どのように自社の製品やサービスに至らせるのか、その導線を考えることこそ、中心的な事柄となります。
マーケティングでは、サイトの訪問者が最終的に製品やサービスを購入したり、運営者が望むアクションを起こすことを「コンバージョン」(以下、CV)と呼びます。すべての顧客が、すぐに決断してくれるわけではありません。そこで重要なのが、「ナーチャリング」と呼ばれるものです。ナーチャリングは「育成」を意味するもので、顧客が望ましいCVに至るまでをアプローチすることを指します。たとえば、ウェブで情報サイトを見つけ、もっと詳しい情報が欲しいと先へ進めると、メールの登録を求められたりした経験があると思います。ここでサイト運営者は、顧客がサイトを離れた後も、メールを通して再度接点を構築することができます。有益情報やキャンペーンなどを活用して、CVへと誘導するというものです。
ここで重要なのが、マーケティングにおいて基本的な考え方となるファネル(漏斗=ロウト)構造です。顧客には段階があり、最も望ましい顧客は最下層です。CVを行い、さらに高いロイヤリティや影響力をもっている顧客という層です。
マーケティングファネル
上層部は、まだ関係性が浅い状況です。ここからナーチャリングを行い、下層へと向かわせます。ECサイトを例に考えてみましょう。皆さんも経験があるかもしれませんが、ネットで何か購入する際、かご(カート)に入れたものの、最後まで購入に至らなかったことがあると思います。その理由は、「今じゃないかな?」「ほかのメーカーの物はどうだろう?」などと躊躇してしまうからです。この「かごに入れたまま購入しない」顧客のことを、「かご落ち」顧客と呼びます。そこで「かご落ち」顧客に、5%オフの特別キャンペーン情報などを送るとどうなるでしょうか。実は、かなりの確率で購入に至ります。なぜなら、すでにかごに入っていて、最後の一押しを待っている状態だからです。新たな顧客を探すより、断然コストパフォーマンスに優れた見込客であるといえます。
そして、CVしてくれた後も、顧客との関係性を保つことが大切になります。高いロイヤリティをもった顧客へと成長させ、ファンとして良い口コミをしてくれるなど、アドボカシー(擁護)のステージに到達させることが最も重要です。
次回は、ここをより詳しく、顧客の消費行動を「旅」に見立てて考える「カスタマージャーニー」をお伝えいたします。不満のポイントを拾いに行く、購入しない理由を見つけるなど、具体策の手がかりになると思います。